*雨宿り*

秋斉さんにお使いを頼まれた
帰り道のことだった。

山道で急に雨が降ってきて
雨宿りができる所を
探して歩いているうちに
すっかり道に迷ってしまった。

なんとか人気のない
お寺には辿り着いたんだけど。

陽は落ち、あたりは真っ暗。
雨は止む雰囲気がない。

「どうしよう…」
雨に濡れ体温が奪われる寒さと
闇の恐怖に身体が震える。

そんなとき遠くで
人の声が聞こえた気がした。

耳を澄ますと
声はどんどん近付いてくる。

「○○さーん…○○さーん…」
「………!?」

この声は…沖田さん…!?

「沖田さん!!」
私はその場で声を上げた。

すると、すぐに
お寺の扉が勢いよく開いた。

「○○さん!!」
見慣れた色の羽織。
傘をさした沖田さんだった。

「沖田さん…」
「藍屋さんに○○さんが使いから戻らないと聞いて…心配になって捜していたんです」

沖田さんはそう言うと
傘を畳んで中に入ってきた。

提灯で室内が
うっすらと明るくなる。

「怪我はありませんか?」
「はい…」
「それからよかった…夜も更けてるし何者かに襲われたりしてないかと、気が気じゃなかった」

沖田さんは
そう言うと私を抱き締めた。

「沖田さ…」
「びしょ濡れじゃないですか!?」
沖田さんは
私からすぐに身体を離した。

「このままでは風邪を引いてしまいます、着物を脱いだほうがいいですよ」
「ぬ、脱ぐって…他に着るものがないですよ…」
「私のを着たらいい」
沖田さんはすぐに羽織と
肌襦袢を脱いで渡してくれた。

「あ、ありがとうございます」
とは言ったものの…
沖田さんの前で
脱ぐなんて恥ずかし過ぎる。

「………」
私が動かないのを見て
沖田さんが慌てて
「私は外に出てますね」
と、外に出て行き扉が閉まる。

私は濡れた着物を脱ぎ
水分を搾り、少し身体を拭いて
沖田さんの着物に袖を通す。

まだ温もりのある着物に
顔が熱くなる。

「沖田さん、もういいですよ…」
外で待つ沖田さんに
声をかける。

「大丈夫ですか?」
「はい…全然違いますね…本当に寒かったから…」
「本当だ…」
擦り合わせる私の手を取って
沖田さんは呟いた。

「身体も冷えて…」
沖田さんの手が肩に触れる。
肌襦袢と羽織だけだから
普段と手の感触が違う気がする。

「こうしたら少しは違いますか?」
気付いたら
また抱き締められていた。
恥ずかしいけど…。

「あ、温かいです…」

沖田さんの
腕の力が少し強くなる。

首筋に吐息を感じて
急に身体が熱くなっていく。

ゆっくり身体が倒された。

「お、沖田さ…ん…っ!?」

優しく口づけされて
声が詰まる。

頬や首筋にも
沖田さんの口唇が触れてくる。

いきなりの出来事に
私は身体をビクッと震わせた。

沖田さんが
はっとして起き上がる。

「すみません…」
「………」
「急にあなたに触れたくなって…こんなところで、本当に申し訳ありません…」

沖田さんの身体が
すっと離れて熱が逃げる。

「あ…私、沖田さんに触れられるの嫌じゃないです…今はちょっと驚いただけで…」
「本当に…?」

沖田さんの手がそっと
頬に触れて、私が静かに頷くと
彼は嬉しそうに微笑んだ。

優しい口づけは
身体が蕩けるほど深く甘かった。