いつも私を見守ってくれている秋斉さんが、熱を出して寝込んでしまった。
お医者様の話では軽い風邪に過労が重なったので、安静にしていれば大丈夫とのことだった。
(秋斉さん、いつも私達を気遣ってくれて、置屋の仕事以外にも忙しそうにしてたもんね…)
お医者様を見送りながら私はため息をついた。
(お世話になるばかりじゃ駄目だよね…こんな時位秋斉さんの役に立ちたいな…)
そう思いながら、秋斉さんの部屋に戻ると、寝ているはずの秋斉さんが帳簿をめくっている。
『秋斉さん!駄目ですよ寝てないと』
私が声をかけると、秋斉さんは少し笑って言う
『大丈夫どす。○○はんは心配症どすなぁ…たいしたことあらしまへんし、帳簿もつけとかんと…』
そこまで言って、秋斉さんが咳き込む。
私は慌てて秋斉さんに駆け寄って、背中をさすりながら言う。
『ダメです。お医者様が働きすぎだとおっしゃってました。ちゃんと寝てないと、治るものも治りません!』
そう言ってじろりと秋斉さんを睨むと、秋斉さんは肩をすくめて布団に潜り込んだ。
『今日の○○はんは、えらい怖おすなぁ…そんな顔してはったら可愛い顔が台無しどす…』
布団に入った秋斉さんが私の顔を見つめて言う。
可愛いという言葉と秋斉さんの瞳にドキッとしながらも、私は強気な口調で反論する。
『秋斉さんがちゃんと寝ててくれれば、こんな顔しませんよ』
枕元に置かれた桶で手拭いを絞って秋斉さんの額にのせると、秋斉さんが短く息を吐く。
(本当はつらいに違いないのに…)
気丈に振る舞う秋斉さんの様子を見ていると、胸が苦しくなった。
『秋斉さん、何か欲しいものとかありませんか?』
私が聞くと、秋斉さんは少し考えてから布団から手を出した。
『眠るまで…手を握ってもらえまへんやろか?』
少し顔が赤いのは、多分熱のせいだけじゃない…
私が小さく頷いて手を握ると、秋斉さんは嬉しそうに微笑んで目を閉じる。
『今から言うことは、熱のせいの譫言どす…○○はんの手はあったこうて安心します…元気になっても離しとないなぁ』
いつもと違う秋斉さんの言葉に赤くなりながら、私も秋斉さんの手を離したくないと思って秋斉さんを見つめていたのでした。