構想・設計・工事・維持
笠井設計一級建築士事務所
構想・設計・工事・維持
このページでは戸建て住宅を想定してお話を進めさせていただきます。
手狭になった、バリアフリーに、地震に対して不安、あちこち痛んできた……などの理由からリニューアルあるいは建て直しなどを考えますが具体的にどこから入るかというと、とまどってしまいますね、そこで「設計事務所(正しくは建築士事務所)に相談しなさい」と申し上げます。
理由は、単に建物・家を得ることだけ考えるならば、建て売り、工務店、大工さんなど直接工事を行う方に頼めばそれで事足りるのですが、できあがった建築物は、そこから何年も何十年も先まで建ち続くのです。ですから今、充分希望通りの建物であっても、数年先には不満足なものとなる「思っていたよりも痛み方が激しい、年をとってみるとバリアフリーへの配慮が足りなかった、子供が大きくなって出て行ってしまい今では大きすぎて使いにくい」など。
あるいは資金面の配慮について、新築のローンの返済だけ考えれば良いというものではありません。数年先には痛んだ部分の取り替えや、塗装のし直しなどのことも考えておかないといけません。
そのほか法律、建築基準法、民法、消防法、等々、また防犯に対する配慮、数え上げればきりがない位です。そこで、設計事務所に協力してもらって互いに希望や、知識・知恵を出し合いながら建築を造っていくのが最短で経済的な方法だからです。
建物に対する構想を第三者、すなわち工務店など(以下施工者といいます)実際に工事を行う人たちに施主(あなた)の意志を伝える方法として微に入り細に入り説明したもの、すなわちそれが設計図書
(注1)
です。またこの設計図書は法的に適合しているかなどのチェック機関(役所や消防など)にも提示されチェックを受ける資料ともなります。
この設計図をもとに、施工者は建物を完成させるための手順を計画し、その手順通りの作業ができるように前もって材料の発注・下ごしらえなどを行います。
なぜこのようなことをくどくど説明するかと言いますと、すなわち設計図書が出来あがった時に建物はすでに完成しているからです。
工事の進行とともに建物ができあがると思っていらっしゃる方が多いので、あえてこのようなことを説明いたしました。工事現場で行われている作業がすべてではありません、次の作業、さらにその次の作業の下ごしらえや、準備が別のところで進行しているのです。
その設計は基本設計、実施設計という二段構えで作られます。
基本設計
あなたやご家族のこの計画に対する考えや予算、そして皆さんの生活内容などを把握することから入ります。将来におけるこの家の使われ方なども設計者は頭に入れて設計に当たるでしょう。基本設計は、施工者に工事の内容を伝えるためのものではありません。
建築全体の基本的な構想
立地条件の調査
省エネ、シックハウス対策、バリアフリー等の提案
地域・街並みとの調和、デザインの提案
建築工事費(概算)の算出
以上の要素などを検討して建物のおおよその概念を作る、これが基本設計です。
実施設計
基本設計で出来上がった概念を、第三者(施工者)に伝えるために具体的な形に作り上げていく、これが実施設計です。従ってこの実施図面が出来上ると言うことは建物が完成することと同じ意味を持っているのです。
キッチンに設置されるシステムキッチンの形・仕上げ材、木工事なら樹種・等級・仕上げ程度、このあたりが決まっていないと正確な見積もりは出来ません。このようにほとんどの細かい部分迄が決定される、これが実施設計です。ただ、塗装の色とかビニルクロスの柄などは後から決めることもありますが多くの場合工事費に影響のない範囲と考えた方が良いでしょう。
時々工事が終わって変更工事の費用について、トラブルが起きるのはこのあたりの理解不足・説明不足が原因となることが多いようです。
(注1)
形状を表現した設計図以外のも構造計算書や工法や質などを示した仕様書などを設計図書といいます。
いよいよ工事、地鎮祭から始まって仮設工事、地業………と続きますが工事のイロハは別の機会にさせていただきます。
理解していただきたいことは工事にはいろいろの専門職が工事にあたるということです。
すなわち、くい打ち業者に鉄筋の加工は出来ません、鉄筋工事業者はコンクリートの専門家ではありません、コンクリート業者に仮枠工事は出来ない...等々です。
そこで施工業者、工務店などが工事の手順を計画して必要なときに必要な専門職を手配して、設計図に基づいた作業、工事を行わせるのです。
このときあなたに変わって、あなたと設計者が共同で作り上げた設計図書通りの工事が間違いなく行われているか、確認し間違いがあれば指摘、訂正を指導する、このような役目を引き受けているのが、設計事務所の設計監理(工事の管理は施工者の仕事です)です。
先に述べたように工事にはたくさんの専門職が関わりますが、同じ工事でもそれぞれが持っている工事の質・程度の基準には差があるものです、このあたりの調整も大切な監理の仕事の一部と言えるでしょう。
工事の完成に当たっては完成検査も必要です。
施工者が前もって検査を行っているでしょうが、別の目で見ることによって新たに発見される不具合がないとは言い切れないからです。
新築した建物は、すべてが性能通りの状態です。
しかし建築物には寿命の異なる要素が混在しているのです。
骨組みの部分はそう易々と機能低下は起こしません20年30年と問題なく存在するはずです。
外壁の塗装は10年から15年で再塗装が望まれます、エアコンはどうでしょう、10年くらいが目安でしょうか。給排水は...湯沸かし器は...?
このように寿命の異なるものが混在しています。また機能が時の要求に応えられなくなることもあります。建物に設けられた機器類の多くが今コンピュータ化されています、このあたりで機能劣化、というより時代の要求に追いつかなくなることもあります。
そこで、マンションなどの場合は長期修繕計画などが作られていますが、個人の建物にも、そのあたりに気配りは必要なことです。
10年補償という言葉を聞くことがあると思いますが、10年をすぎた頃から問題は出てくるものです。
機能低下、材質の劣化、耐震性能に疑問、こんな場合も設計事務所はノウハウの提供や調査診断にも相談に乗り、あなたに代わっての適切な判断も提供するのです。
文責:東京都建築士事務所協会 大谷徳義
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