笠井設計一級建築士事務所

良き建築士事務所(建築士)選びの予備知識

建築士事務所(建築士)は何をするか?


A. 予算計画に参加、助言など


建主の予算に対する各工法の内容や利点・欠点の説明・相談など。
例えば木造・鉄骨・コンクリートなどは「それぞれいくらの予算が必要か?それぞれの特質は?この場合どれが最適か?」などについて相談する。
建主の予算で何と何をするかの相談。
建築工事はいくら、電気や給排水冷暖房などの設備はどれとどれとどれが、それぞれいくら、什器や家具などを造り付けにする場合の利点は何?、その予算はいくら、などについて詳細な例をあげて相談をする。
住宅金融公庫や公的融資などの相談。

B. 工事の計画に参加、助言など


工事の期限など
工事施工の方法。
イ)特命とはどういうものか?
ロ)入札とはどういうものか?
ハ)見積り合わせはどうか?
などを説明。この場合はどれが最適か?などについて相談する。

C.適切な間取り、空間の構成、デザイン(=計画)を具体的に助言など


間取り

一般に住宅設計を依頼される場合、ご自身で考えたプラン(間取り図)を持って来られて、「これはどうですか」とおっしゃる場合がある。
それらのプランは、その方がマンションに住んでいる方だとそのプランも〈 マンションの間取り 〉みたいだし、住宅メーカーの家に住んでいた方はやはり〈住宅メーカー型のプラン〉に似ている場合が多い。(自分が知っている家に似てしまうことが多い)
間取りは〈部屋の並べ方〉ではなくて〈その空間に住む方や家族が快適で合理的で便利で良いデザインを感じて生活するのに最善の空間〉を創作もしくは選別することである。
その作業を設計事務所は依頼された方と一緒に、そして依頼された方のために努力する。

大工はカンナをかけるのが上手いとすれば、また建築会社は家を造る工事が上手いとすれば、設計事務所は家を考え創作しデザインすることが上手い。
そしてあれこれを具体的に解説し説明し相談する。
例えば、「この柱はなくてもいい」とか「この部屋は大きなテーブルを置くと椅子に座った人の後ろを通れない」とか「柱を特注する費用で絨毯とカーテンができるけどどっちにするか」とか。
計画を一緒にしてくれる。


D. その他、あらゆる方面にわたっての相談など


「高そうだから…」とか「こんなこと言ったら…」などと考えて設計事務所と話をしないことがあるが、設計事務所は「それは予算がこれだけかかる」とか「やっても後で無駄になる」とか「それはイイデスネ」とか対応してくれる。
あらゆる方面にわたっての相談を受ける。どんなことでも話をしていただきたい。


E. 設計図書を作る。


その設計図書が建築主の要望・意図・その他に対して適切であるかどうか...確認する。(でき上がった図面、書類ごとに説明をする)

話し合ったあと〈設計図書=設計図と仕様書〉ができる。
その〈設計図書〉は見積りを経て工事金額を決定するものであり、またその建物の施工の詳細までを決定するものである。
だから〈その設計図書〉が建主の希望や要望を確実に満たすものかどうかを見積や工事施工の前に建主が確認しなければいけない。
ところが、建主は〈設計図書〉を自分の眼では確認できないことが多い。
「ここはこうなっていますよ」と図面を見せながら説明をして確認しなければいけない。(設計図書が建主の要望と違っていないように、再度それも、具体的に確認をする作業を設計事務所がする)


F.設計図書を“建主”に代わって施工者に提示し、説明し、質問などに応える


設計事務所は〈建主と話し合いをしてでき上がった設計図書〉を施工者に手渡し、詳細を説明する。
施工者はその設計図書を見て〈質疑書〉を設計事務所に提出する。
設計事務所はその質疑に〈 応答書 〉を出す。
施工者はこれらによって更に詳しい情報を得てから〈 設計図書 〉に基づく〈 見積書 〉を作成提出する。
相手の施工者を数社選定し競争させてもよい。


G.施工者が提出した「見積書」をチェックする。


材料・数量・単価・手間賃・会社利益・その他各金額が妥当か)をチェックする。
見積書というものは、
1.材料(製品なども同じ)が単位当たりいくらで=単価
2.それがどれだけ必要か=数量
3.合計いくらか=金額 と記述されている。

施工についても
1.一人いくらの職人が=単価
2.その工事を仕上げるのに何人かかるか=数量
3.合計いくらかかるか=金額 と記述されている。
これらがその建物全体にわたって拾い出されている。

その全項目の金額が合計されたものに、〈施工の現場経費〉、〈会社経費〉を加えたものがその建物の総金額である。

それに消費税
普通、住宅の場合、現場経費は12.5%内外、会社経費が12.5%内外である。
または、両方を一緒にして経費とすることもある。
この場合、経費の金額や%を気にすることは大事ではあるが、もっともっと大事なことがある。
例えば、「おたくだから経費を無しにしましょう。もうけなくてもいい…」と言って見積書に記載されていた経費を0(ゼロ)にする〈売手〉がいる。
少なくとも、経営をしている個人や会社である以上、「経費をゼロにすること」はあり得ない。
「経費をゼロにする」ということは「その分がどこか他の項目に紛れ込んでいる」ということである(もし本当に経費がゼロでも仕事をするならば、それは〈倒産前の自転車操業〉の可能性があるからかえって注意しなければいけない)。
だから、「経費をゼロにする」ことよりも、他の項目の単価・数量・金額が設計図書に基づくものであり、妥当なもの、正当なもの、であることが大切である。こられが妥当か?正当であるか?は専門的な知識と経験を必要とするものである。
一般の方々では分かりにくい。
設計事務所は〈売手の見積書〉をチェックするときにどうするか?は次の通りである。
まず、材料(製品)の単価が正当かどうか?
つぎに数量を確認する。
すべての材料等の数量が設計図書のとおりであるかをチェックする。
これら全項目を詳細にチェックする。
第三者、つまり売手側ではなく、買手側に立って…

だから「経費がゼロ」と言っても、それ以上のものが他の項目に紛れ込んでいたら、ちゃんと分かる。
設計事務所は一般にこのような見方をする。

したがって
1.「経費はゼロ」といったらかえって注意する。
2.見積の他の項目全体が正当(実費=安い)であるかどうかを見定める。
3.見積が正当であれば、経費も正当なだけ認める。
その方が、結局は安くてよい買い物をすることになる。


H.適切な施工者を選定するためのデータなどを整理し、建主に助言・進言する


見積書を提出した施工者(一社または数社)のデータを整理して建主に助言する。
(見積内容を検討したり、事前の質疑の内容を分析したりすることから、施工者の技術的能力が分かることもある。)

見積書は具体的な金額を表わすものであるが、同時に、その見積書を作成した側の意図や技術的な傾向をも物語るものでもある。
例えば、木材や大工手間賃が高いか安いかで〈木材工事〉を〈いつも使っている社員に近い立場の大工〉が担当するのか、〈別のグループ〉に外注するのか、わかる。全体に安いのに、電気工事が高いのはなぜだろう?。と考えていくと、社長の弟が材木会社をやっている、しかし、設備関係は大きな設備会社と提携しているようだ、などがわかる。

現在は、会社・個人を問わず、何らかのやり方で技術を高めることによりコストを削減し、価格を下げないと生き残れない時代である。そのことに対する会社の姿勢が、見積書の数字や項目や構成に表れる。見積の過程でやりとりする質疑応答についても言える。「こんな質問をする会社は、どうも…」となることもある。
それらを専門家として総合し、整理して助言する。


I.契約に立会い、署名捺印する。


契約はその建築のすべてを決定するものである。
その契約に立会い、署名捺印するということは、契約以後のあらゆる問題について、「これは設計図にこうあったからこうなのだ!」とか「これはこうでなければいけないことだからこうしなければいけない!」ということを、発注者の立場で判断することを、発注者に対して約束するということである。
そして、発注者に代わって必要な指示をしていく立場であることを、受注者に対して宣言することでもある。


J.確認申請などの手続き


行政関係の手続き、住宅金融公庫、など(代行もしくは指導)


K.工事施工に関して、各工事の必要な時期に監理をする。


施工が「契約=設計図書、見積書、等」に反する場合には修正させる。
また、技術的に不備である場合なども適正にさせる。
設計事務所は第三者の立場で、公正に、建主のために監理をする。
専門的な立場で監理する。


L.工事の各段階に関して適切な“検査”をする。


鉄筋が設計図書の通りか?防水が適切であるか? 設置した機器が作動するか? などの全般、全項目に必要な検査や試運転等をする。
検査に〈 合格 〉しないと施工は次に移れない。


M.工事費支払いの審査をする。


途中も含めて、施工者の請求金額は全てチェックし、支払いの金額・時期等について、承諾をする。
普通、工事途中の工事金額は工事の進め方によって建主が施工者に支払うものである。
その時点でその金額その時期が適切かどうかを設計事務所がチェックする(払い過ぎで工事中断などがあったとき、不測の損害をこうむらないようにするためである)。


N.完成検査をする。


できあがった建物が「契約=設計図書、見積書、等」どおりにできていることを確認する。
検査に〈合格〉してはじめて引き渡し、工事費の最終支払いができる。


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